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電気伝導率計の原理と応用

概要

 電気伝導率計は河川水などの環境水、飲料水および産業で使用される水溶液など、様々な分野で測定が行われています。この電気伝導率は溶液の電気の伝わり易さを示すものであり、溶液の電気抵抗の逆数です。センサを溶液に浸すだけで簡便に水質測定が可能であり、様々な用途に利用されています。ここでは、電気伝導率の原理、測定方法、電気伝導率計の種類およびその応用例を紹介します。

1. はじめに

 河川水などの環境水、飲料水および産業で使用される水溶液など、様々な分野で電気伝導率の測定が行われている。電気伝導率は溶液の電気の伝わり易さを示すもので、溶液の電気抵抗の逆数である。電気伝導率セルと呼ばれるセンサを溶液に浸すだけで簡便に溶液の水質が測定できるため、様々な用途に利用されている。

2. 電気伝導率の原理

 電気伝導率測定法はJIS K0130「電気伝導率測定法通則」に定められており、溶液の電気伝導率κは,図1に示したように面積1m2の2個の平面電極が距離1mで対向している容器に電解質水溶液を満たして測定した電気抵抗の逆数で示される。

伝導率計図1.JPG

図1 電気伝導率の測定原理

溶液の電気伝導率の単位はSI単位では〔S/m〕(Sはジーメンス)で,電気伝導率の数値によっては〔mS/m〕,〔μS/m〕などを用いる。
 旧単位では電極間距離を1cm、電極面積を1 cm ×1 cmとして〔S/cm〕で表し、SI単位とは100倍値が違うことになる。実際の電極は数mm2から数cm2位のため、旧単位の方が感覚的には分かりやすく、分野によっては旧単位が用いられる場合もある。
 塩化カリウム標準液の電気伝導率をκ、その標準液を満たした電気伝導率セルの電極間で測定した電気伝導率をGとした場合、κ/Gをセル定数〔m-1〕と言う。
理論的には電極面積と距離から計算によってセル定数Jを決定できるが、実際には電極面積や距離にバラツキがあるため、電気伝導率の分かっている標準液の電気伝導率を測定することでセル定数を決定している。
 標準液として塩化カリウム溶液を用いるが、JIS K0101 / K0102では、A, B, C, Dの4種類の電気伝導率が定められている。(表1)

表1 塩化カリウム標準液の電気伝導率

伝導率計表1.JPG

 電気伝導率セルを交換したときは、必ずセル定数を変更する必要がある。
 水溶液の電気伝導率は、温度の影響を受け水温が高くなるとその値は大きくなる。このため電気伝導率の測定は、常に一定温度で測定することが望ましい。しかし、環境水の測定などの場合には温度を一定にすることはできないため、被検液の温度を測定し、温度と電気伝導率の関係から温度係数を求め、電気伝導率を25℃での値に換算して示す。
温度係数はイオン成分や濃度によって異なり、正確に測定するにはその試料の温度係数を定めておかなければならないが、通常は簡易的に(1)式により、温度係数から25℃の電気伝導率を算出している。温度係数は塩化カリウム希薄溶液の2.0%/℃を使用することが多い。

      κ25=κ/[1+α(t-25)]       (1)

            κ25:25℃の電気伝導率
            κ:t℃の電気伝導率
            α:温度係数

電気伝導率は溶液中のイオンの総和ともいえるため、溶液のイオン総量を知ることに意味がある場合や、溶液に含まれるイオンが決まっている場合などは目的のイオンの濃度を測定することが可能になる。

3. 電気伝導率の測定方式

 現在実用化されている電気伝導率の測定方式としては、図2に示した交流2電極方式、交流4電極方式および電磁誘導方式がある。
 電気伝導率を測定するには被検液中に一対の通電用電極をもった電気伝導率セルを浸せきし、これに電流を流し抵抗を測定する。測定は、交流で行われる。直流では電極面と被検液との間に分極と呼ばれる現象が生じて被検液の真の抵抗が測定できなくなる。
 交流4電極方式は、分極および汚れに強い特長を持ち、工業用や携帯用に用いられている。
 電磁誘導方式は、電磁誘導により電気伝導率を測定するもので、汚れや分極の影響が少なく高電気伝導率の領域(海水等)に有用であるが、電気伝導率セルが大きくなり、少量測定や低電気伝導率の測定には不向きである。

伝導率計図2.JPG

図2 電気伝導率の測定方式

4. 電気伝導率セルの種類と特徴

 電気伝導率セルは、溶液液の電気伝導率に適したセル定数のものが用意されており、表2に浸漬型セルの一例を示した。

表2 電気伝導率とセル定数

伝導率計表2.JPG

 浸漬形電気伝導率セルは、図3に示したようにセル構造が気泡の影響を受けないように電極上部に気泡抜き用の穴があいているものと、電極自体をガラスパイプに取り付けて気泡抜けさせるものがある。これらのセルは溶液に浸漬するだけでセル内に気泡が対流せず簡単に電気伝導率を測定することができる。
 連続測定や炭酸ガスなどの影響を嫌う測定では、図4のような流通型電気伝導率セルが用いられる。この電気伝導率セルは、両端にチューブ接続してセル内に試料溶液を流通させながら測定を行う。

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図3 浸漬型               図4 流通型

5. 電気伝導率計の種類

 電気伝導率計は、用途に応じて様々なタイプがある。いずれの場合にも、電気伝導率セルとその信号を電気伝導率に変換して表示または出力する変換器で構成される。
 図5は卓上型、図6は携帯型の電気伝導率計の一例である。これら電気伝導率セルにはセル定数が記憶されており、変換器に接続するだけで自動的にセル定数が読みとれるようになっている。

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図5 卓上型          図6 携帯型

図7に工業用の変換器、図8に工業用電気伝導率セル一例をしめした。図9に示したように変換器と電気伝導率セルを接続して使用する。

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図7 工業用変換器        図8 工業用電気伝導率セル

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図9 工業用電気伝導率計の接続例

6. 電気伝導率計の応用

 様々な溶液の電気伝導率と対応する電気伝導率セルのセル定数を図10にまとめた。セル定数J=100の電気伝導率セルは、その測定範囲から最も一般的に水溶液の測定に使用される。

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図10 水溶液の電気伝導率と適正セル

表3に身近な食品の電気伝導率と塩分濃度の測定例を示した。電気伝導率と塩分濃度は大まかには比例関係にあり、精度を必要としない場合には簡便な塩分濃度計としても利用されることがある。

表3 食品の電気伝導率測定例

伝導率計表3.JPG

 図11には船舶などの塗装面の塩分濃度を測定する表面塩分計の測定の様子を示した。本装置は電気伝導率と塩分濃度が比例することを利用し、簡便に塗装面の塩分濃度が測定できる。

伝導率計図11.JPG

図11 表面塩分計の測定の様子

7. おわりに

 電気伝導率計は、溶液の電解質成分を簡便に測定できるため、純水から高電解質プロセス用液の管理まで用途が広い。ボイラ給水、イオン交換水、上下水、製薬用水の管理、半導体プロセスの水質管理、河川水、湖沼、海水などの環境水の水質監視、生産プロセスにおける濃度管理、水耕栽培、養殖漁業の水質管理、船舶の表面塩分濃度管理、食品の簡易塩分管理等、pH計と並んで様々な分野で利用される計測器である。

羽毛田 靖
(東亜ディーケーケー株式会社)

2013年8月13日 公開

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